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為替操作国とは?わかりやすく基準や条件を解説!アメリカが中国を認定でどうなる?

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アメリカ財務省は、8月5日に中国を経済制裁の対象となる「為替操作国」に認定したと発表しました。
為替操作国とは、アメリカが「貿易で優位に立つ為に、為替介入などで自国通貨安に誘導している」と認定した国を指します。
自国通貨の流通量を増やすなど、金融的なテクニックを使って、他国通貨とのレートを下げている国ですね。
認定されると経済制裁の対象になります。

今回は米中貿易戦争の只中で、中国が為替操作国に認定される意味について考えてみました。

為替操作国とは何?わかりやすく基準や条件を解説!

一般的な意味での為替操作とは違って、「為替操作国」はアメリカが認定した場合を指す言葉です。認定はアメリカが一方的に行い、是正処置を講じなければ高関税などの制裁が課せられます。

つまり、アメリカの法律用語と言って良いと思います。

為替操作国はアメリカの財務省が毎年4月と10月に作成する「為替報告書」に基づいて認定が行われます。狙いは自国通貨への為替介入等によって通貨安に導き、アメリカとの貿易で有利に導こうと試みる国を牽制する事です。

あくまでも、対米貿易における不公正な動きを牽制し、場合によっては報復処置を行う制度上の呼称です。

個人消費の盛んなアメリカは、貿易国の多くから商品を売り込む市場として期待されていて、その為には対米ドルで自国通貨が安いほうが有利に働きます。つまり、輸出に有利になるわけです。これを、無制限に許しておくと外国製品でアメリカ市場が溢れかえり、自国の工業や産業が価格競争に敗れて崩壊する恐れがあります。その為、意図的な為替操作を、アメリカは警戒しているわけです。

具体的な基準は、以下のようになります。

 

  • 貿易収支 ⇨ 対米貿易黒字額が年間200億ドル以上
  • 経常収支 ⇨ 経常黒字額が国内総生産(GDP)比で3%以上
  • 為替介入 ⇨ 為替介入による外貨購入が1年で6カ月以上かつGDPの2%以上

 

しかし、厳格に適用されているわけではなく、ようは財務省が為替操作国と認定したら、為替操作国であるというのが実情です。

アメリカが中国を為替操作国に認定

アメリカはブッシュ大統領時代に、国の方針として経済への不介入を軸としていました。中国の豊富な労働力と安い人件費、中国通貨・人民元をドルペッグとして固定レートにしていた事で、安い中国製品が大量に流入し、国内の木工や軽工業が壊滅的な打撃を受けました。

オバマ大統領は、これを是正しようとしましたが、既にウォルマートなどの量販店を通じて大量に流通していた中国製品を止める事ができず、自由貿易体制という錦の御旗が、強行処置に出る事をためらわせました。

いわば、根っからの政治家でなく、政治思想やポリティカル・コレクトネスを気にしないトランプ大統領だからこそできた処置と言えます。現在の中国は、先行しているアメリカの関税比率引き上げを中心にした経済制裁によって、経済構造が搖らいでいます。

人民元の価値を下げる事で、かけられた関税と相殺する事ができるので、中国が為替操作をしているというのがアメリカの主張です。

自民元/ドル通貨為替レート2008-2019

現在の人民元のレートは、7元/1ドルを越えて、11年振りの安値水準です。アメリカが為替操作国を認定したのは、実に25年ぶりの事で、トランプ大統領の本気具合が伝わってきます。これによって、トランプ大統領は制度的にも高率関税を中国に対してかける論拠を得た事になります。

中国が為替操作国認定された事で世界への影響は?

中国政府が為替に対して是正処置をとらない場合、本格的な報復関税が課せられる事になります。今回の関税品目は、一部ではなく日用品を含む広範な範囲を含みますので、アメリカ経済も無傷では済みません。

それによるアメリカ経済の減速が懸念されていて、既にニューヨーク・ダウなどの経済市場に大きな影響が出ています。更にアメリカが関税率の引き上げを武器として、各国の金融緩和策を牽制する事で、EUや日本といった大口の取引先との軋轢も激化する可能性があります。

また、中国経済の減速が明確になる事で、中国市場で稼いでいたドイツなどの経済にも悪い影響が出る事が懸念されます。

まとめ

今現在、自国の経済を振興する為に、中国もEUも日本もアメリカも金融緩和へ向かっています。つい先日まで、金融引き締め策をとっていたアメリカも、8月に入ってついに金融緩和策へ方向転換しました。世界中で金融緩和政策がとられると、実体経済に必要な現金の数百倍のお金が流通して、ジャブジャブに貯まったお金自体が暴走して、世界経済に悪い影響を与えます。

お金というのは、経済活動に対して報酬として支払われてこそ価値が発生するものなので、使われずに為替操作の為に増え続けるお金は、債権や通貨同士の売り買いに使われて、為替の変動を流動的にしていきます。こういう実の無い経済を仮想経済と言います。

そして、この仮想経済が風船のように膨らんで、制御が難しくなっているのが現代の経済市場なのです。誰かが利を得ようと、金融緩和を進めると、他国は不利にならないように同じ政策を取ります。それが負の連鎖を引き起こすのが経済市場がかかえる爆弾になっています。

この問題は、金本位制を廃止して管理通貨制度に移ってから、通貨発行権を持つ独立国の課題として、今なお解決策の見つかっていない経済の矛盾です。

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