先日、金融庁が
「長寿化が進むので資産形成には自助努力が必要。老後は2000万円のお金を準備しておいたほうがよい」
といった発信をして、大きな話題になりました。
サインは、前から出ていました。政府主導の金融商品「Nisa」「iDeco」、金融所得に対する税率の引き下げ(20.315%)。
つまり、投資による財産の形成を、国単位で推奨していたわけです。
もちろん、アベノミクスと連動した、塩漬けになっていた国民資産を、
投資を通じて景気浮揚に役立てようという目論見もありました。
今まで、その役割は銀行が担っていたわけですが、
銀行以外の決済手段の登場、IT技術の進歩により、その役割は急速に縮小しています。
この動きは、国や銀行に資産形成を丸投げするのではなく、
自らリスクをとって、自主的に老後資金を準備して下さいというメッセージです。
とはいっても、日本人的価値観から、未だに個人投資家なんて言うと、
うさんくさい目で見られるのが、実情です。
また、サラリーマン社会の日本では、投資自体に、まったく馴染みが無いですよね。
しかし、知らないでは、現実が許さなくなってきたようです。
この辺りの事情を、探ってみました。
「老後2000万円」のニュース概要
金融庁が、2019年6月3日に、まとめた報告書によりますと、
人生100年時代を見据えた資産形成を促しています。
長寿化によって、定年退職後の余生が伸びる為、95歳まで生きるには、
夫婦で約2000万円の金融資産の取り崩しが必要になるとの試算を示したものです。
公的年金のみによる生活設計だけでは、資金不足に陥る可能性に触れ、長期・分散型の資産運用の重要性を強調しました。
老後2000万円の内訳は?夫婦で何歳まで?
平均的な収入・支出の状況を推計した結果、男性が65歳以上、女性が60歳以上の夫婦のモデルケースでは、
年金収入に頼った生活設計だと、毎月約5万円の赤字がでるとしています。
余生を20年とすると1300万円、30年だと2000万円不足するとしました。
長寿化が進む日本では、現在60歳の人の25%は95歳まで生きるとの推計もあります。
報告書では、現役時代から、長期的な視野に立った分散投資で、資産を形成するように推奨しています。
老後2000万円の金融庁試算はホント?
参院選前という時期に敢えて具体的な推計まで出して、「年金が制度的に維持不可能である」と発表するには、
それなりの覚悟と危機感が必要だったと推察されます。
つまり、推計の精度は別にして、年金制度が無条件にアテになる制度では無くなったのは、確かです。
皆さん、薄々は察していましたし、年金問題がクローズアップされたのは、小泉前首相の時代です。
その時に発表された、「100年安心な骨太年金政策」にしても、
それを信じた有権者は、少なかったのではないでしょうか。何しろ、少子化で若者が減っているのです。
「年金だけでは安心して暮らせないのか」などの反発が野党や国民から相次いでいるため
麻生太郎金融担当相は試算について
「一定の前提で出した単純な試算。あたかも赤字なのではないかと表現したのは不適切だった」と述べましたが、
どんなマジックを使っても、年金の資金は減り続け、必要とする老人は増え続けるのですから、
普通に考えて年金だけでは不可能です。
その為、極めてリアルな数字と、考えられます。
まとめ
とかく日本人の意識として、金に執着する事は下品とされています。
教育の現場でも、税金が国民の三大義務であるといった、テスト向けの知識は教えますが、具体的な納税の仕方は教えません。
会社が代行してくれるという意識があるからです。
先日、トヨタ自動車の社長が、「終身雇用は守れないかも知れない」という見通しを出した事からも、
会社に頼った資産形成や老後設計が成り立たなくなりつつあります。
会社と個人の生活が一つだった時代は、もう持たないのかも知れません。
生計を立てる道にしても、老後の生活についても、自身の問題として、
投資する事で、自らの価値を高め、準備を進める覚悟が必要です。
会社の指示に従うだけの、内部でしか通用しない生き方は、これからは通用しないのでしょう。