7月18日午前10時半頃、アニメ制作会社「京都アニメーション」で、男が放火し、爆発をともなう火災が発生しました。
警視庁によると、放火事件の被害者数では、平成以降、最悪だそうです。
痛ましい事件ですが、この火災では、異常に火の回りが早かった事にも、注目が集まっています。
建物の構造、出火原因、防火設備など、一瞬にして惨劇の場となった、火災現場を読み解いてみます。
目次
京アニ放火事件の概要
7月18日午前10時半頃、京都伏見区にあるアニメ制作会社「京都アニメーション」の第一スタジオで、男が放火し、爆発をともなう火災が発生しました。
この火災で、33人(男性12人、女性20人、不明1人)が死亡、男を含む36人が病院に搬送され、17人が入院しました。
府警捜査1課によると、男が玄関から建物内に入り、1階で「死ね」と叫んでガソリンとみられる液体をまいて火を付けたそうです。
従業員が男の後を追い、建物から数十メートル離れた場所で伏見署員が男の身柄を確保しました。容疑者は、重いやけどをしており入院しました。
免許証によると関東地方在住の41歳で、同社での勤務歴はなく、調べに「自分が火を放った」と話したといいます。
当日は、来客の予定が入っており、セキュリティーシステムを切っていたのが、裏目に出ました。
現場には、ガソリンの携行缶(20リットル)2つと台車、手提げかばんとリュックサック、包丁数本とハンマーなどが残されていました。
府警によると、京都アニメーションは、昨年、インターネットの脅迫じみた書き込みについて宇治署に相談をしていたそうです。
爆燃現象とは?
カート・ラッセル主演の映画のタイトルで有名になった、「バックドラフト」と同義語です。
一度激しく燃焼をした後、密封された室内で、空気不足に陥り、一旦火勢が落ちた状態から、出入り口が開く・窓が壊れる等の変化で、外気がドッと流れ込み、爆発的に燃焼が広がる現象を言います。
室内の空気が燃焼で消費されると、一旦は鎮火状態になりますが、火種が部屋中で燻っている状態です。この状態で、外気が雪崩れ込むと、爆発に近い勢いで燃焼します。
消防士の側から見ると、室内から炎の渦と共に、強い気流が発生して押し戻される形になるので、「バックドラフト」と呼びます。
非常に危険な現象で、消防士の殉職者も出しています。
バックドラフトとフラッシュオーバーの違いをわかりやすく説明
フラッシュオーバー
室内の局所的な火災が、短時間に一気に部屋全体に広がる現象です。明確な定義があるわけではないのですが、部分的な火災によって、室内の燃え草が燃え移りやすくなり、何かを契機に一気に燃え広がる状態を指す言葉です。建材や室内の物が燻る事で、未燃焼の可燃性のガスが天井付近に溜まり、放射熱などによって表面の炭化が進む事で、延焼する環境が整う事から引き起こされると考えられています。
バックドラフト
爆燃現象の見出しでも説明したように、爆発的に燃え広がる原因が、外気の流入によるものを指します。強い気流をともなって、室外に向かって炎が舞い上がるので、建物全体へ延焼が一気に広がる原因になります。
京都アニメーションの建物構造と爆燃現象
読売新聞
上図は、火災の舞台になった京都アニメーションの第一スタジオの建屋の構造です。各階をつなげる階段とは別に、1階から3階まで、吹き抜けになってる螺旋階段が存在します。
ガソリンが撒かれたのは、このらせん階段付近と思われ、煙突効果で、各階へ素早く火が回ったのでないかと思われます。
また、火災の火元になったガソリンは、揮発性の高い燃焼物質な為、上昇気流に乗って、建物を舐めるように勢い良く延焼した可能性も指摘されています。
アニメスタジオという事で、セル画や現像用の薬品などが保管されていた可能性もあり、可燃物がもともと多かったのではないかとも言われています。
京都市消防局などによると、建物は2007年の建築で、スプリンクラーや屋内消火栓は設置されていなかったが、消防法令上の「事務所」に該当し、設置義務はなかったそうです。
まとめ
このアニメスタジオは、普段はカードで出入りを監視するセキュリティーが作動しているのですが、当日はマスコミの取材の予定が入っていたので、解除してあったそうです。
偶然が重なって大惨事になってしまったと思うと、やりきれない思いになります。
そして、恐らく普段は、部署の連絡を密にするのに役立っていた、中央付近の螺旋階段が、1階から3階までの火の回りを早めてしまったであろう事も残念です。
最近はアニメーションもデジタル作画が進んでいますが、スタジオならば、フィルム・セル画・現像液等の可燃物が保管されていたのかも知れません。
異常な火の回りは、普段ならば、気にもしない偶然が重なった結果と考えられます。
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