もしかしたら、電池(バッテリー)の世界に革新を起こす、新しい発明がなされたかも知れないというニュースが飛び込んできました。
ベルギーの研究機関であるimecは、2019年6月に、体積エネルギー密度が425Wh/Lと高い固体電解質のLiイオン2次電池(LIB)を開発したと発表しました。
現在の電池(バッテリー)は、電解液を利用した一部液体を含む「リチウムイオン電池」が主流です。
しかし、電解液を利用した電池(バッテリー)は、大きな技術的なブレイクスルーが無い限り体積エネルギー密度が800Wh/Lが限界と言われています。
今回発表された固体電解質の電池は、完全に固体の物質のみで構成され、伸びしろが1000Wh/Lまで、届くと予想されています。
そのほかにも、数々の利点があり、電気自動車(EV)のバッテリーや、スマートフォン用の長寿命バッテリーとして期待されています。
そんな、地味ながらも、大きな変革の原動力になりそうな全固体電池について調べてみました。
目次
全固体電池とは何?わかりやすく簡単に説明!
現在存在する電池の仕組み
現在使われている電池の主流は、ソニーの開発したリチウムイオン電池です。これは、電解液を浸透させた素材で、蓄電を実現させていて、例外無く一部液体を含んでいます。
これは、リチウムイオンが抵抗無く移動する為に、液体状の物質が必要な為です。
しかし、この方法だと、内部の電圧が高くなると、急激に内部抵抗値が高くなる特性があり、蓄電できる量に限界がありました。
全固体電池の仕組み
もともと固体というのは、液体に比べてイオンが移動する上で、不利でした。その為、今までの電池は、例外なく一部液体を含んでいたのです。
これを特殊な方法で固体化する事で、完全に全固体の電池に仕上げたのが、今回の発明です。
研究自体は、20年前からありましたが、実用になるレベルまで、蓄電量を上げられたのは、今回が初めてになります。
素材研究には、日本のバナソニックも協力しています。
全固体電池の利点
メリット | 説明 |
安全性の向上 | 電解液の液漏れや揮発と、その発火の恐れが無くなる。
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超高速充電 | 数分で80~90%充電する事が可能になる
⇒電気自動車(EV)への適用が魅力に |
エネルギー密度の大幅向上 | エネルギー密度が大幅に向上する(小型で大容量)
⇒容量の電極材料を使えるため、理論上では従来のリチウムイオン電池よりもエネルギー密度を、数倍から5倍ほどにできるという分析もある。 |
自己放電大幅低減 | 自己放電が大幅に減少するので、電池放電寿命が長くなる |
設計自由度の向上 | 電位の設計自由度が向上し、多層化も可能になってくる |
フレキシブル性向上 | フレキシブル化が可能になり、実装設計も容易になる |
基盤実装可能 | 基盤に表面実装できる部品になり、実装設計も容易になる |
性能劣化が遅い | 液漏れや発火の危険が無い為、高湿下や高い負荷のかかる環境でも劣化しにくい |
全固体電池の課題
イオンの移動が高いレベルで可能な、素材の発見、もしくは固体化製法の確立が課題でしたが、そこに可能性を開いたのが、今回の研究成果です。
全固体電池の開発状況 2019最新情報
上図の赤が、これまでのリチウムイオン電池の性能向上の歴史です。長年に渡る研究と改良で、開発当時の4倍まで性能を向上させました。
青が、全固体電池の性能向上予想ですが、1年で2倍に性能を向上させています。
ロードマップによると、5年で1000Wh/Lまで到達すると予想されています。
全固体電池の量産化は?スマホはいつから?
実は、今回発表された全固体電池は、製法で作り上げた液体と固体のハイブリッド電池になります。つまり、形状的には固体なのですが、液体電解質の欠点も引き継いでいて、純粋な固体電解質と比べると、急速充電性能が低いという欠点があります。
今回、研究成果を発表したimecは、半導体の高密度実装技術の開発で世界的に知られる会社で、ナノテクノロジーの専門家集団です。製法を工夫する事で、これらの問題を解決できると予想しています。
つまり、まだ研究室レベルで、成果を上げた段階で、実用化には、なおハードルがあります。
まとめ
電気自動車の最大の欠点と言われている充電時間に、大きな短縮の道が見えてきたのは、朗報です。
しかも、製品にまとめられれば、エコロジーから見ても従来のリチウムイオン電池の欠点を大幅に改善できます。
中国で、胸ポケットに入れていたスマートフォンのバッテリーが、爆発して心臓を直撃して死亡する事故がありましたが、そういう心配も無くなるはずです。
これからのクリーンエネルギー社会に不可欠な、高性能電池(バッテリー)が開発されれば、また世の中が大きく前進する事になります。